微生物の生物地理学的多様性に関する研究
研究の目的は、地球生物圏の辺境に生きる微生物をモデルとして、地球生命の多様性と可能性(限界)を知ることである。ここでの辺境には2つの極限的な環境を考えている。まず一つは、深海、地底、南北両極域、砂漠などの生息環境条件(圧力、塩分、温度、乾燥など)の極限である。もう一つは、微生物サイズの極限として、常識的でないほどに小さな微生物、暫定的にナノバクテリアやナノ微生物と呼ばれるものを研究対象とする。辺境微生物の多様性を明らかにするため、微生物を実際に分離培養し、その系統を調べる。その分離源として、北極から中緯度、低緯度帯を経て南極に至るまで、あるいは、高山の頂上から深海底に至るまで、地球の様々な場所から採取した試料を用いる。そして、微生物の系統分類と生物地理を合わせた系統地理(phylogeography)、およびそれと表裏関係にあるはずの生理生化学的な適応を解明する。
(上段中央:中井さん)
【著書・論文等】
- 中井亮佑、長沼毅 (2011) 「第6章 辺境の微生物」、『シリーズ 現代の生態学 第11巻 微生物の多様性科学・生態学の新展開』、日本生態学会編、共立出版
- Ryosuke Nakai, Takashi Abe, Haruko Takeyama, Takeshi Naganuma (in press) Metagenomic analysis of 0.2-μm-passable microorganisms in deep-sea hydrothermal fluid. Marine Biotechnology, in press, doi: 10.1007/s10126-010-9351-6.
- Kise Yukimura, Ryosuke Nakai, Shiro Kohshima, Jun Uetake, Hiroshi Kanda, Takeshi Naganuma (2009) Spore-forming halophilic bacteria isolated from Arctic terrains: Implications for long-range transportation of microorganisms. Polar Science 3: 163-169.